裏金でトラブル?よくある話です。謝礼金で領収書を切る必要はある?
先日、あるお客様より依頼がありました。
「この不動産、売るのは売ってもいいけど、その売却価格を表に出したくないんだよね。どうにかなる?」という相談でした。
たしかに安すぎるほど安いもので、その契約書を作成したは良いものの、「もらう代金の3分の1の金額で契約書を書くことはできるかね?」というものでした。
表に出したくないお金?
私は一瞬戸惑いましたが、´あぁ~、税金の関係で表に出したくないお金なんだ´と思い、聞き返しました。
「それはそれで構いませんが、あくまでも3分の1の売買取引になるため、あとの3分の2は謝礼という形になりますが良いですね?」と。
すると、「そうそう、そうしてくれれば問題ない」というものでした。
私はそれまで苦労した買主との折衝を無駄にしたくないと思い、買主に売主の事情を説明し、「おそらく3分の2のぶんは領収書が切れないと思いますよ」と説明しました。
すると買主から、「あぁ、そうですか。売買契約書も領収書も3分の1の額になるということですね。あとは謝礼金ですか。ということはあくまでお礼ですね?」と。
私は不動産仲介業です。売主が「こうすることは可能か?」と言われて、私の判断で「いやぁ無理ですよ」などとは言えません。
取引は売主と買主
そういった判断ができない理由は簡単です。不動産会社は、当事者ではないから です。
当事者でない以上、一介の不動産仲介業者の判断で行うとそれこそトラブル発生です。なので必ず相手側に相談します。
もちろん、片方が発した言葉そのものを丸ごと言ったりはしませんよ。
トラブルにならないような言い方をして伝えるのも不動産屋の仕事の一つです。
なので、今回の件はあくまでも売買代金は3分の1ということで、そのぶんの仲介手数料を我々は頂戴して、あとは当事者同士で好きにやってくださいよ、ということですね。
謝礼金に領収書は発生するか?
あくまでも「お礼」という概念で、いわゆる「志し金」として渡すものです。
それに対して領収書を切らないといけないか?というと、お礼金に対しての「領収書」というそのものの概念がありません。
だってお礼ですから。「ありがとう」や「おめでとう」といって渡すものに対して領収書を要求するのは逆に失礼というものです。
結婚式に出席すれば「お祝儀」を渡しますが、領収書を請求しますか?
お寺にお布施の名目でお金を渡して領収書を請求しますか?
葬式に参列してお香典を渡して領収書を請求しますか? ということです。
不動産屋は仲介と言えど責任が負えない部分がある
そうです、そこは当事者ではないため、謝礼金にまで首を突っ込むとそれこそ大変です。
それを先日、首を突っ込み過ぎて「なんでそうなるんだ!」と怒られたことがありました。
私は「いやいやいや、それはあくまでも気持ちとして渡すだけのお金ですから、あとのやり取りに関しては私は申し訳ありませんが口出しできる立場にはありません」と答えました。
それはそうです。売買契約書も3分の1の額でお互いが納得している訳ですから。
謝礼金は払うも払わないも自由?
お礼金ですから、気持ちがあれば払ってよいし、気持ちがなければ払う必要もありません。
今回の件、売主からの相談でしたので、「それはそれで良いんじゃないでしょうか?」と申し上げて話をまとめました。
別に責任回避をしたつもりもなく正論をかざして、「買主さん、これはお礼ですから領収書は切れないのですよ、物件有りきのお取引でしたので、そこは売主さんからのお願いを聞いてあげませんか?」と伝えて終わりました。
その後、売主には契約書と謝礼金を持って行き、それですべてが終わりました。
皆さん、気を付けましょうね。