日本人は新築志向が強過ぎて,それが空家問題に拍車をかけている?
前回の続きとして、空き家問題について書きたいと思います。前回はこちら。
前回では被害の拡大が指摘される空き家問題について語りましたが、空き家の増加数は新築戸数から解体戸数を引いて、そこから世帯の増加数を引いたものに等しいと、そういうシンプルな公式を紹介しました。
そのうち世帯数は決まっているとすると、問題は新築戸数と解体戸数、ということになるわけですね。
解体戸数の増加ばかり目を向けている
現状は政府自治体の対策は解体戸数の増加のほうに偏っているわけですね。
新築戸数のほうに着目して考えてみると、新築を減らす?じつはちょっとこれも問題があるわけです。
日本では毎年100万戸の住宅が新築されているわけですが、アメリカの新築住宅戸数とあまり変わらないんですね。
日本の新築戸数の増加
日本の人口は約1億2千万人で、3億2千万人のアメリカの約2.5分の1ですね。
このことは新築住宅に入居する割合が日本人はアメリカ人より高くて、逆に中古住宅に入居する人の割合は低いことを示しております。
実際にデータからも住宅取引件数に占める中古住宅、日本では15%に対して、アメリカでは80%以上なんですね。
データもそのことを裏付けています。その背景として、日本人の新築志向が強いからです。
購入したい住宅の中古物件の割合は?
内閣府の調査によると、購入したい住宅としては、新築戸建というのは6割以上を占めて、新築マンションが1割、
以下、中古の戸建て、中古マンションと続きます。
リクルートによる日米を比較した意識調査によると、住み替え回数がアメリカ人が平均6.4回に対して、日本人は3.7回です。
このことから、住居に関しては日本人は定着型ですね。
家に対する価値観によって大きく変わる
また、家に対する価値観に関する質問では、日本人は「疲れを癒す」とか「家族のだんらん」 などとイメージでとらえているのに対して、アメリカ人は「投資対象」とハッキリしてるんですね。
特に注文住宅の場合はその時の家族の特性に合わせた自由なデザインの住宅をつくることができる、なによりも新品というメリットがあるわけですね。
しかし、その分デメリットも多くて購入価格も割高になり、新築した家に住み続けたのでは家族構成の変化に合わせた柔軟な住み方が難しいわけですね。
現に日本人はアメリカ人より少ない住み替え回数で、悪く言ってしまえば´我慢を強いられている´ということになるわけですね。
価値の減少速度が速い日本の住宅
また既存住宅としての流通が限られていますので、個々の事情を反映した間取りを選ぶことから汎用性が乏しいということで価値が減少するペースが速いんですね。
アメリカの2倍以上のペースで日本の住宅の価値というのは減少していくんですね。
かつてはこれを土地価格の上昇が補っていたのですが、現在ではそういった地域はごく一部に限られています。
資産価値が急速に無くなるとすれば、家を建てる時の資本投下もそれに応じたものとなり、総じて貧弱な住宅ということになりがちです。
もちろん地震が多い土地柄とか、そもそもの工法、あるいは双方の国の人口動向などにも違いはあるわけですが、いずれにせよ日本人は新築志向の強さのおかげで大きな犠牲を払っている可能性があるわけです。
新築信仰が強い日本人特有のものと果たして言えるのか、実は政策や経済的な事情によってあとから形作られたものもあります。
手厚い支援がある新築住宅
政府による数々の住宅建設にかかわる支援措置、今でこそ中古住宅にも対象が広がったものも多いですが、所得税、贈与税、登録免許税、不動産取得税などの減税措置、あるいは取得に関する金利優遇など、新築住宅中心の手厚い支援が行われてきた、そうした背景には住宅投資そのものので見るとごく僅かです。
新築志向をにわかに脱するというのは相当困難が予想されるわけですが、空き家問題が深刻化される今日、そろそろ呪縛から解き放たれてもいいのではないかと思いますね。
新築の際は標準化された間取りのしっかりとした家を建てて、手入れをすることによって資産価値を維持しながら、必要に生じた住み替えをするという方向への舵取りにより、結果的に新築戸数を抑制する形の空家数のコントロールが考えられてもいいのではないかと思いますね。
日本人の「もったいない精神」にも沿った解決方法だと思いますよ。
身の丈に合った新築住宅を購入することが大事
結果として貧弱な住宅事情につながっている可能性のある日本人の新築志向、空き家問題をきっかけに新築志向からの脱却を図るのもよい時期ではないかと思いますね。
その一方で、決して背伸びすることなく、生活を圧迫しない程度の支払いで済むような家づくりやローコスト系の建売住宅も視野に入れて考えることも必要です。