土地の引渡時期は守りましょう,売主が勝手に土地を耕作?枝豆事件勃発!?

トラブル・クレーム解決事例

もう数年も前の話ですが、ある地方の土地の取引に絡み、売主が契約後、土地を勝手に耕作したため、トラブルが発生した件をご紹介します。

その土地は春の5月頃に無事契約をしました。

売主とはいろいろと折衝をする中で、´何かにつけ難題をおっしゃる方だなぁ´とは思っていましたが、それは私も商売、売主買主双方と合わせて話を進めないといけません。

都市計画は未線引き区域で地目が田、そのため農地転用許可に2,3ヶ月はかかる予定で、契約書にもその旨を記載して、双方が納得の上で契約をいたしました。

契約後に売主が驚くべき行動に!

契約後、しばらく経って現地を見に行くと、何やら土地を耕した痕跡が…。

その耕したであろう面積は約10坪程度(畳20畳分)でしたが、明らかに人の手で耕していました。

私はびっくりして売主に連絡、「何か耕した痕があるのですが」と尋ねると、「あぁそれね、私がしたんだよ。枝豆を孫に送ってやろうと思ってね。そのあとは大豆として収穫するよ」と、と~~~ってものんきなご回答。

私は思わず「え~!!それで収穫はいつ頃になりそうですか?」と聞くと、「う~ん、そうだね、涼しくなった頃だろうから9月になるだろうねぇ」とまたまたのんきなご回答…。トホホ。

私は「今は5月ですよ、農地転用の許可が下りるのが2,3か月はかかるとしても8月には引き渡しをしないといけないので、それまでには収穫してもらわないと引き渡しができなくなりますよ」と説明。

「そん時はそん時たいね、大丈夫じゃないの?」と今度はも~っとのんきな回答、私は「いやいやいや、それは困
りましたね。それはそれで一言おっしゃってくれれば耕作自体をしないように言えたんですが、なんで言ってくれなかったんですか」と聞くと、

「いや、私の土地なのでいいかなぁと思って」と、さらに輪をかけたようにのんきな回答が継続…。

契約後はもう買主の物?

民法上で言えば、売主と買主が「売買の意思表示をした時に所有権は移転する」とあります。あくまでも民法上ですけどね。ですので、民法上は買主の所有物という事になります。

私は´これは今の時点ではどうすることもできない、´と思い、とにかく買主が行う農地転用の許可申請が伸びることを祈るしかありませんでした。

そして、8月頃、まだ許可が下りていない時期に土地を見に行くと、小粒になった枝豆が少しだけ実り始めていましたが、大きくなるのはまだまだ先の様子。

買主からの連絡もまだなく、連絡があった時点で「許可が下りたので引渡しをお願いする」と言われるのが分かっていたので、´まだ連絡がありませんように´と祈りながら、その一方で2,3日に1回は現地を訪れ、´枝豆さんよ、早く実れ!´と手を合わせて祈っていました。

傍から見たら変なおじさんですよね~~~。(笑)

許可申請が早く承認されてしまい万事休す

そうこうしているうち、買主から連絡、「もうそろそろ許可が下りそうなので決済の日程を決めましょう」と。

私は´きた~~~!´とまるで織田裕二のものまねのごとく、涙を流しそうになりながら、「はい、わかりました、売主に確認します」と答えて電話を切りました。

すぐさま売主に連絡してその旨を説明すると、「あぁ、収穫はまだやんねぇ、あと1か月はかかりそうやん」と相も変わらず呑気なことを言われ、私はもう完全にトホホ状態。

買主に「すいません、売主側の事情で何とか1か月後にしてもらえませんか?」とお願いすると、案の定、「いやいやそれはないですよ、こっちは急いでいる、何か特別な事情があれば別だが、そんなのないでしょう?」と言われたため、私は仕方なく、「じつは売主さんがお孫さんのために枝豆を栽培しており、収穫があと1か月ほどかかるそうなんですよね」と正直に告白しました。

その時の買主は「それは分からないでもないが1か月は長すぎる。5月に契約して8月には決済する予定だったのにそれを無視して栽培するのはおかしいのでは?」とごもっともな回答…。

売主を説得するしかなかった

私は腹の中で´おっしゃるとおり´とつぶやき、売主宅を訪問して交渉、「すいません、買主が側がどうしてもとおっしゃっており、私も困っております」と胸の内を打ち明けると、売主さんも事情がようやくわかってくれたのか、「あんたの仕事も大変ねぇ、わかった。じゃあ孫への枝豆はあきらめるよ、決済しよう」と言ってくれました。

というか、´あんたが勝手に植えるからこうなるんじゃないか!´と思いながらも顔には出さずグッとこらえて笑顔で「かしこまりました。ありがとうございます。なんでしたら枝豆をスーパーで買ってきましょうか?」と言うと、「いやいやそれだったらとっくにそうしている、枝豆は収穫仕立てがうまいんだよ」と自分のやらかしたことを棚に上げて自慢げのご様子。

私は「あぁそうだったんですか。それはお孫さんには大変申し訳ないですぇ、気の毒でたまりません」と伝え、売主宅を後にしました。

それから両者と打ち合わせを行い、決済日を1週間後に設定して無事決着しました。

このやり取り、間に挟まれてどうすることもできない悶々とした日々が続き、正直、生きた心地がしませんでした。

でもこれが仕事です。売主さん、勝手に土地をいじるのはやめましょうね。

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