売却後に家が火災消滅?モラルハザード案件で事情聴取を受けた衝撃事案!

トラブル・クレーム解決事例

もうずいぶんと前の話ですが、ある大豪邸の物件を仲介したことがあり、その家は久留米市の草野町という所です。

未納連山の麓の街で、風情があり、文化的・歴史的スポットも多く、久留米市内で観光名所にもなっている街として知られています。

その片田舎の人里離れた場所の大豪邸、売主は60歳代はとうに過ぎている女性、今では久留米の市街地のマンションに一人暮らしです。

数年前までは旦那様と一緒にお住まいだったとか。その旦那さんに先立たれ、一人で住むには広過ぎるため、マンションに移住したというものです。

しばらく売れなかった物件で値段もそこそこしていたので、結構苦戦を強いられていました。

ある日突然、前向きなお客様が!

1本の電話が鳴り、その方はもう電話口で「物件は下見をしていて前向きに検討している。リフォームが必要だろうから今度中を見たい」とのこと。

私は売り上げもそこそこ上がっていたため、その物件が成約に至ればかなりの好成績になるため、喜び勇んで現地待ち合わせ場所に。

既に現地には当人と数人のリフォーム業者らしき人物が。

私は持参した鍵を取り出し中へ案内。かなりの大豪邸のため私は当然1時間はじっくり見るだろうと思っていたら何と、皆さん足早に物件を内覧、なんと5分で終了。

「早く申し込みを入れるため抑えておいてほしい」とのこと。私は「かしこまりました。満額という事であれば抑えますが、早めに申し込みをお願いします」と言い残して帰りました。

直ぐに申し込みが入り、契約~決済までトントン拍子、大苦戦していた物件はあっけなく終了し、売主にもかなり喜んでもらいました。

その後、大変な出来事が!

引渡しから1週間くらいが経過した頃、新聞を見てびっくりしました。「草野町で一軒家が全焼」とのこと。

私はその記事を見て一発でその物件と分かりましたが、負傷者は一人もいなかったため、特に前所有者に連絡をする事もありませんでした。

約1ヶ月が経過した頃、ある人物から連絡がありました。何やら保険会社の調査員らしき人でした。

私は不動産業に入る前、それと同じ仕事をしていたため、立場が逆転したシチュエーションにワクワクしながら、「何の事でしょうか?」と聞くと、「草野の物件の火災事故、香月さんが関わっているとのことでしたので詳しく話を聞きたいのだが」とのこと。

私は当然、「そういえば新聞に載っていましたね。何か怪しいのですか?」と聞くと、「面談にて詳細を」とのこと。翌日、その保険調査員と会いました。

私:あの物件はなかなか売れなくて苦労しました。

調査員:そうですか、買主は何やらグループホームか何かの老人介護施設を考えていたようですが。

私:そうおっしゃっていましたね。

調査員:何人くらいいましたか?名前は聞いていましたか?

私:はい、4人いて2人いましたが、そのうちの1人が窓口となっていてその方は同じ不動産業者と名乗っていましたよ。名刺はもらっていませんが。

調査員:どんな雰囲気でしたか?

私:雰囲気と言われても。普通でしたよ。結構気に入ってくれて。気になったのはあまり内覧時間を取らなかったことですかね。とても簡単に申込まれました。

調査員:そうですか、今回、火災保険の加入額が大きく、保険会社が出し渋っています。それには理由もあり、そのうちの1人に´前科´があるんですね。なのでこうやって話を聞いています。

私:それは怪しいですね。しかも引き渡してから1週間も経過していなかったと思います。それもあるんでしょうね?

調査員:そうですね。それが大きいです。

私:こう言っては何ですが、周りに民家もなく、負傷者を一人も出さずに済む物件に目を付けたのであれば、打ってつけだったんでしょうね。

調査員:何せ全焼ですからね。警察も「不審火で刑事事件ではない」として捜査は打ち切っているようです。

私:そうでしょうね。リフォーム時の残り火?となっていましたね。かなり怪しいですね。あっ!私は関係していませんから(笑)

調査員:それは分かっていますよ。今回、第三者が介入している可能性はありませんから。

火災保険のモラルハザード

この手の故意による火災事故を引き起こした場合の事をモラルハザード案件と言って、調査の対象になります。

保険会社も慈善事業ではないため、そう易々と支払っていては大変です。

しかしながら、今回の事故、引渡しから数日というのは明らかに胡散臭く、その時を思い出せば、数人がいとも簡単に物件を見て、しかも軽く周辺を見るだけ。それだけで「買う」という返事。

保険金額も物件額の約2倍という破格の額。周辺に燃え広がることも無い環境を考えると確信犯だったと思います。判決がどうなったのか気になるところではありますが、もう何年も経過していますので興味も薄れました。

今後は気を付けないといけないのでしょうが、私は不動産屋です。何をどう気を付けないといけないかは教えてください。(笑)

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