「その指値、本当に妥当ですか?」〜現場で起きたリアルな交渉劇〜

こんにちは。不動産売買の最前線で日々奮闘しているカツキです。
今日は少しリアルな現場の話をしたいと思います。
新築建売住宅を販売している中で、たまに「えっ……」と思うような指値交渉をいただくことがあります。
もちろん、買主様にはご予算の都合や価値観がありますから、指値交渉自体は決して悪いことではありません。
ですが、その「幅」があまりにも現実離れしている場合、かえって話が進まなくなることも…。
事例:3,398万円の新築建売に対し、3,000万円を提示
今回のお話。販売価格は3,398万円の新築建売。
これに対し、買主様からいただいたご希望価格は、なんと3,000万円。
差額は398万円。率にして約11.7%。これは、今の相場感や建築コストの高騰を考えると、かなり難しい金額です。
私は仲介の立場として、真摯に売主側へご相談しました。
ですが、売主担当者から返ってきた回答は、「正直、それは難しいです。せいぜい頑張っても150万円引きが限界」とのこと。つまり3,248万円が最低ライン。
その後、買主様にその旨を丁寧にご説明したところ、今度は買主様から「では3,198万円ならどうか」とのカウンター。……しかし、売主の最低ラインは3,248万円。両者の思惑が交わらず、膠着状態に陥ってしまいました。
仲介としてどう動くべきか?
このような場面では、私は常に以下の3点を心がけています。
1. 感情論ではなく、根拠で話す
買主様がなぜその金額を希望されるのか、「気持ち」ではなく「理由」を伺います。
例えば、近隣の物件と比較して割高に感じるのか、住宅ローンの限度額なのか…。理由があれば、売主への説得材料にもなります。
逆に、「ただ安く買いたいだけ」なら、それはご自身の希望であって、市場価値とはズレがあるということを丁寧にお伝えします。
2. 相場と物件の希少性を再確認していただく
「この物件はこのエリアでこの価格帯、しかも新築。仮にここがダメでも、似た条件の物件はこの先いつ出てくるか分からない」と事実を伝えます。
特に、土地価格や建築コストが高騰している現代では、「今が底値」である可能性も十分あります。
3. 「縁」の大切さを伝える
不動産は「ご縁もの」です。この物件に出会ったことが偶然ではなく、ある意味運命的な出会いであることをお伝えします。
「その398万円の差で、このご縁を逃してしまってもいいのか」という問いかけは、意外と心に響くものです。
交渉とは「歩み寄り」
今回のケース、3,398万円 → 3,248万円という譲歩を引き出せたこと自体、実は売主側も相当頑張ってくださっています。
買主様にもその点をしっかりとご説明し、「無理を通して話が流れる」よりも、「妥協点を見出してご契約へ進む」ことのメリットを感じていただきたいと思います。
価格交渉は、駆け引きではなく「信頼のやり取り」だと思っています。
私たち仲介の仕事は、「売主・買主双方が気持ちよく取引できる着地点」を探すこと。今回のように難航する場面でも、真摯に向き合っていきたいですね。
どちらの味方でもなく、「両方の味方」であり続けるために。