契約自由の原則と現状渡しとはいえ買主は瑕疵(欠陥)について言いたくなる?
不動産売買契約というのは、不動産会社が作成した書類を取り交わして行う最初の大きなイベントです。
- 売主買主が内容の確認をする
- 署名捺印を行う
- 手付金の授受
ざっくり言ってしまえばそれが契約ですので、それ以外の事は何も問題がなければ特に不要です。
その他、用途地域がどうの、ライフラインがどうのというのは、特に重要な取り決め事もなく、尚且つ、先々に整備予定があって負担金等が発生しないという事であれば本当に何も問題はありません。
隠れた瑕疵(欠陥)というのは原則申告制
今でこそインスペクション調査(建物診断)を実施したかどうか?の説明義務が重要事項で説明しないといけなくなりましたが、調査を実施しなければならないということではありません。
そのような項目は他にもあります。
- 耐震診断実施記録有無
- 石綿(アスベスト)使用記録有無
それはこれまでに調査をして記録があるかどうかの事実を買主に説明しなければならないというもので、「調査をしなければならない」という訳ではないという意味においては建物診断と同じです。
耐震も石綿も最近の建物で診断記録があるかどうかを売主に尋ねてもほとんどが「していない」の回答です。
それを説明する事によって、その説明自体に意味があるのか?という疑問があります。
「していない」とさらっと流し読みするくらいであれば、本当はそのような意味不明な項目は取っ払ってしまい、本当に重要な項目であれば´重要な特約事項´に記載すればよいだけです。
そちらのほうが分かりやすくないですか?少なくとも私はそう思います。
その証拠として、数年前の姉歯事件は世間を揺るがす社会的大問題となりましたが、最近ではよくツイッターなどで「姉歯物件は一棟も倒壊していない」とコメントがしている事実があります。
住んでいた建物と長年空家物件は調査が難しい
所有者居住中の売り物件というのがたまに見受けられます。
何かしらの事情により売却しないといけない、そしてお金が入り次第、他の物件を買うか借りる、というものです。
そのような場合、売主としては物件にそれまで住んでいるため、土地や建物の隅々まで熟知していることが多く、聞き取りがしやすいです。
その一方で、もう10年も空家状態という物件はその聞き取りが難しく、熟知どころか「設備が使えるかどうかも分からないし、シロアリや雨漏りも分からない」というケースが殆どです。
10年も空いていれば自然損耗や経年劣化で傷んでいる場合もあるからです。
そうなると、不動産屋が隅々までチェックする必要があります。
特に水周りは大事で、設備がちゃんと使えるのか?、雨漏りやシロアリが目視で確認できるのか?ということです。
不動産屋は建物の専門家ではない
不動産屋は「取引」に際して最後まで円滑にサポートを行う義務があり、それが不動産屋の存在意義です。
ですが、建物の専門家ではない以上、例えばハシゴをかけて屋根に上って瓦を一つ一つチェックしたり、床下に潜ってシロアリを確認したりすることなど到底できません。
ではどうするのか?売主に聞くしかないのです。
そして、あまりにも古ければ、契約書の特約に「建物は〇〇年経過しているため、経年劣化の可能性があり、欠陥を確認できないため、引渡し後、何が起きても売主は瑕疵担保責任を負いません。買主の責任と負担において行います」という文言を入れて重々説明を行って納得してもらいます。
中古車もそうですが、新車と比べて優れているのは金額だけです。中古だから安い!じつはそれだけなのです。
引渡し後でも何かあれば買主は言ってくる
10年、15年経過した建物は微妙です。その期間を経過した後が一番何かしらの問題が出てくるからです。
なので、注文住宅の保証期間は10年と定まっているのです。
以前、引渡し後すぐにキッチンの水周りから水漏れが発生し、連絡を受けたことがあります。
その物件は30年ほど経過しており、10年ほど空家状態だった物件でした。
売主はそのような欠陥を知る由もなく、「物件状況報告書」という書類には売主は水周りのトラブルを知っているか知らないかの項目で「知らない」に〇を付けていたのです。
それでも「ちゃんとチェックすればそのようなことは分かるだろう」と買主は言いたいのです。
その気持ちは十分わかりますので、欠陥があるのかどうかは事前にチェックして我々も対応しています。
中古の建物は何か問題があって当然ですが、先に知っておくのと後で知るのとでは大違いですね。
皆さん、気を付けましょう。