登記簿謄本内容に驚愕!大昔の抵当権が残っていて売却できない!?
以前、起きた出来事です。
ある空き地になった土地のお隣さんからの依頼で、「隣の空き地の所有者を調べてくれないか?、金額しだいでは購入を考えたい」とのこと。
どんな細かい情報でも聞き逃さないのが私のモットー(?)
すぐに調べてみると、すぐに所有者は判明し、司法書士経由にて書類を取り寄せて驚愕!
なんと昭和13年という大昔の抵当権が謄本上に記載されているではありませんか!しかも抵当権者(お金を貸した人)が個人。
15年というと戦前です。この頃と今とは時代が違うとはいえ、不動産(土地)を担保に設定して登記するとは…。と、一瞬固まりました。
なぜ抹消手続きをしなかったのか?
当時は「お金さえ返済すればよいだろう」と安易な考えのもと、貸した側も「返してもらえばいい」と、実態としての借金はないのかもしれませんが、実務上の問題として「登記簿から抹消しなければならない」という概念がまったくなかったのでしょう。
よくあるのが、建物の滅失登記です。
解体が終わった後、登記されていた建物を謄本上から消滅させる手続きのことを言いますが、これとよく似てますが、今回は抵当権ですから事情が違います。
滅失も大変、抹消はもっと大変
先日、大昔に建っていた建物の滅失登記をしましたが、当時の所有者が亡くなっていたということで、いろんな場所から書類を取り寄せたり、それはそれでとても大変な作業でした。
滅失自体、建物が存在しないわけですから、利害関係のある人がいないため、割と簡素化されている場合があります。
書類を集めるのは大変でしたが、最終的には「課税されていない証明書」という書類、それと「現況」だけで、ほぼ「職権」のようなもので完了しました。
がしかし、今回は債権の抹消です。そうなるとこれが簡単にはいかないんですね。
何と言っても債権ですから。これが債権者が銀行で、その銀行が存在するのであれば普通の抹消登記ですので、司法書士が通常の抹消手続きを行ってくれます。これは普通です。
今回は個人が債権者で、しかもその債権者が亡くなって、その相続人が存在することが判明しております。
法務局が職権で抹消することはない
法務局は民間ではありませんので、然るべき書類がないと絶対に融通が利かず、今回の件でも相談に行きましたが、「あ~、これは職権ではできない、相続人がいるのであれば相続人に協力をしてもらうしかない」といわれました。
私は「その相続人が代が何代も変わっているため、反応が冷たく協力的ではない、どうしたら良いか?」と質問すると、「それは裁判(抵当権抹消登記請求訴訟)するしかないでしょう。その場合は期間と費用がかかるが、間違いなく勝つでしょうね」と。それで話は終わりでした。
それと、休眠担保権を使った抹消方法があるようで、これは債権者が20年以上行方不明の場合に限られるようで、今回は該当しませんでした。
そもそもなぜ抹消しなければならない?
理屈を言えばいくらでもあります。そもそも昭和13年の数千円の借金、とうに完済して効力自体が無くなっているのは確かです。
なのに手続きをしなかっただけで何故職権で抹消ができないのか?しかも、効力がないわけですから、債権者(相続人)が今さら「借金返せ!さもないと家を取り上げるぞ」などと言うはずがありません。
なので、相続人からしたら´良い迷惑´以外の何者でもありません。まさに´寝耳に水´ですから。
融資不可のため売却が困難
不動産購入のほとんどが融資を使用しますので、銀行としても担保(抵当権)を設定するわけですが、先に1番目の担保が設定している土地に担保を設定することはありません。
いわゆる「いわく付き物件」や「訳あり物件」と化します。
では現金で買えば?ということですが、それなら良いでしょう。しかし落とし穴がちゃんとあります。
このワケあり物件の土地を現金で買った人が現金で建物も建てれば何も問題はありません。
しかし、未来永劫ではありません。権利は永遠に付きまといますし、代も変わっていく からです。
そうなると、今回と同じです。先祖が抹消手続きをしなかったため、代が変わってそのツケが代々引き継がれていくのです。
それを考えたら購入する人がいるとは到底思えません。相当安いなら別ですが。
安ければ買う人もいる
こういったすべての事情を次の購入者に話します。
「こういった事情と経緯があり、実態として債権はなく時効消滅、単に実務上抵当権が付いている」と。
それで「安ければ買います」という人がいて、子孫代々引き継ぐ覚悟と、遺言書を書くという方法があるのかもしれません。
「売却せざるを得ないときは銀行から融資を受けることができないため、現金購入者のみの売却が条件」とかですね。
先祖がした行為は末えいが処理するべき
今回、相続人がいたために生じた問題で、先祖がした行為とはいえ、そこは末えいである相続人全てが協力するべきだと思います。
もし私でしたら、少しは面倒だなぁと思うかもしれませんが、何も実害を被るわけでもないため、そこは協力しますよ。
もしお金がかかることでしたら、そこは今回土地を売却する予定である土地の所有者に何とかしてもらうわけですから、印鑑くらいは押しましょうよ。
事を荒立ててどうこうする理由はないと思いますが、いかがなものでしょう。かなりショッキングな出来事でした。