建設業もクレーム業界!?現場のトイレに貼られた“お願い”が、もはや校則だった件

不動産に関するお困り事・ご相談事

我々は不動産業、建築業とは密接な関係にあり、建設中の現場にはよく出入りします。

先日、まだ完成していない建設現場に入ったときのことです。

現場のトイレに、こんな貼り紙がしてありました。

「注意」

おお、何か重大なことが書いてあるのかと思って読んでみると……

現場での弁当ガラ・空き缶等の持ち込み(家庭ごみ)は、各自で必ず持ち帰りをお願いします。

なるほど。

そして、その下には、

タバコ(喫煙)は必ず指定の場所、もしくはご自分の車内でお願いします。

さらに右側を見ると、

作業時間:朝8時~夕方18時半

日曜日は作業禁止です!

そして土曜日・祝日の音の出る作業は、

9時以降で!

……。

ここまで読んで、私は思いました。

「これ……小学校の校則じゃないよね?」

いや、もちろん内容そのものは、至極まっとうです。

弁当のゴミは持って帰りましょう。

タバコは決められた場所で吸いましょう。

日曜日は作業しないようにしましょう。

土曜日や祝日は朝早くからガンガン音を出さないようにしましょう。

近隣住民にも配慮しましょう。

どれもこれも、普通に考えれば、

「そりゃそうでしょう」という話です。

ところが、この「そりゃそうでしょう」が、世の中では意外と通用しない。

だからこそ、トイレにまで貼り紙が必要になるのでしょう。


「ゴミは持って帰りましょう」って、幼稚園児に言うやつでは?

建設現場で弁当を食べる。

食べ終わった。

弁当ガラが出る。

空き缶も出る。

そして、そのまま現場のどこかに置いて帰る。

……。

いやいやいや。

誰のゴミですか?

自分のです。

では、持って帰りましょう。

以上。

ところが、これを大人に向かって毎回言わなければならない。

だから貼り紙には、

「各自で必ず持ち帰りをお願いします」と書いてある。

ここまで来ると、現場監督さんの心の声が聞こえてきます。

「頼む……。せめて自分の弁当くらい、自分で持って帰ってくれ……」

おそらく監督さんも忙しい。

建物の工程を確認し、職人さんと打ち合わせをし、材料を確認し、近隣にも気を遣い、そして最後には、

「○○さん、空き缶持って帰ってくださいね」まで言わなければならない。

建設現場というのは、家を建てる場所だと思っていました。

違う。

もしかすると、

人間教育まで同時に行う場所なのかもしれません。


そして一番怖いのが「音」の問題

建設現場で避けて通れないのが「音」です。

これは本当に難しい。

なぜなら、

音の感じ方は、人によって千差万別だからです。

大工さんからすれば、「これくらい普通の音でしょう」と思っていても、隣の家の人からすれば、

「朝から何の工事やってるんだ!」となることがあります。

こちらとしては、「申し訳ありません、工事の音ですので……」と言うしかありません。

しかし、住んでいる方からすれば、「工事なのは分かっとる!」ですよね。

分かっている。分かっているけれど、うるさいものは、うるさい。

これが「音」の難しいところです。


朝8時から18時半……一日中やっていいわけではない

貼り紙には、作業時間として「朝8時~夕方18時半」とあります。

これも、「じゃあ8時になった瞬間から、ドリルで壁をぶち抜いてもいいんだ!」

という意味ではありません。

たぶん。

……いや、そうじゃないでしょう。

しかし、現場というものは、何人もの職人さんが出入りします。

「今日は何時から音を出していいんだっけ?」

「土曜日だから9時からですよ」

「え?8時じゃないの?」

「土曜日ですから!」

「そうだった!」

そんな会話が、どこかで本当にありそうです。

だからこそ貼り紙。

「土曜日・祝日の音の出る作業は9時以降で!」

これ、大事です。

なにしろ近所の方にとっては、土曜日の朝というのは、

「今日はゆっくり寝よう」

「久しぶりに朝寝坊しよう」

と思っている日かもしれません。

そこへ朝8時から、

「ウィーーーーーーン!!」

「ガガガガガガ!!」

「ドンドンドンドン!!」

が始まったら……

そりゃ、目覚まし時計より強烈です。

しかも、

止めることのできない目覚まし時計。


「日曜日は作業禁止です!」の文字に、なぜか迫力を感じる

そして個人的に好きなのが、

「日曜日は作業禁止です!」

という一文。

「お休みしましょう」ではありません。

禁止です。

ここには、現場を管理する側の強い意志を感じます。

「日曜日くらい休みましょうね」

ではなく、

「日曜日は作業禁止です!」です。

おそらく過去に何かあったのでしょう。

「日曜日も誰か来て作業していた」

「近所から苦情が来た」

「いやいや、日曜日はダメだって!」

そんな歴史を経て、この一文が誕生したのかもしれません。

貼り紙というのは、実に雄弁です。

そこに書かれている注意事項の数だけ、過去に何かがあった。

そんな気がしてなりません。


建設現場は「クレーム業界」なのか?

不動産業界にいると、建設現場とは切っても切れない関係です。

土地を仕入れて、建物を建てて、完成したら販売する。

その過程で、どうしても避けられないのが近隣との関係です。

工事車両が来る。

職人さんが来る。

トラックが来る。

材料を搬入する。

音がする。

ホコリが出る。

人の出入りがある。

もちろん、現場側も好き勝手にやっているわけではありません。

でも、住宅街の中で家を一軒建てるとなれば、どうしても近隣の方にはご迷惑をお掛けする場面があります。

だからこそ、

「近隣の住民の皆様へ配慮した作業やマナーをお願いします。」

という貼り紙になる。

そして、

「話し声や軽音・切削音など、時間帯を考えての作業をお願いします。」

と続く。

……ここまで来ると、もう現場の職人さんだけではなく、

近所のおじさん、おばさんまで含めた全員参加型のマナー講座

みたいになっています。


「話し声」まで注意される時代

個人的には、

「話し声」

というところが結構ポイントだと思います。

工事の音なら分かります。

電動工具を使えば音が出る。

材料を切れば音が出る。

何かを叩けば音が出る。

でも、

話し声。

これは完全に人間の問題です。

現場で職人さん同士が、

「昨日飲みに行ってさ~」

「マジですか!」

「それがさ~」

「ハハハハハ!」

と盛り上がっている。

本人たちは普通に会話しているつもりでも、隣の家からすれば、

「朝から宴会でも始まったのか?」

となる可能性があります。

建設現場ですから、「声を出すな」というのも無理な話。

ただし、「住宅街ですから、声のボリュームは少し控えめに」

というのは大事ですよね。


口で言っても守らないから、貼る

結局、こういう貼り紙があるということは、

「口で言っても守らない人がいる」

ということなのでしょう。

「ゴミは持って帰ってください」

「タバコは指定場所で」

「日曜日は休みです」

「土曜日は9時から音出しです」

「近所に配慮してください」

これを毎日毎日、現場監督が口頭で言っていたら大変です。

そこで、「もう貼っとこう」となる。

貼っておけば、誰かが忘れても見れば分かる。

そして何より、

「私は言ってません」が通用しなくなる。

トイレに貼ってありますから。これは強い。


建設現場のトイレ、それは「最後の良心」なのかもしれない

よく考えると、建設現場のトイレというのは不思議な場所です。

そこに、

「ゴミは持って帰りましょう」

「タバコは指定場所で」

「日曜日は作業禁止」

「近隣に配慮しましょう」

と書いてある。

用を足しながら、

「……そうだよな。俺も大人なんだから、ちゃんとしないとな」

と反省する。

用を足して出てくる。

そして現場に戻る。

まさに、「トイレで心を洗って、現場へ戻る」わけです。

ただし、これだけ注意書きがあっても、「よし!今日からマナーを守るぞ!」と思う人もいれば、

「……これ、俺に言ってるのかな?」

と思う人もいる。

いや、あなたに言っています。ということでしょう。


結局、一番大切なのは「常識の範囲内」

建設業も、クレームが起きやすい仕事なのかもしれません。

でも、すべてのクレームをゼロにするのは難しい。

工事をすれば音が出る。

車が来れば道路を使う。

人が働けば話し声もする。

これは仕方がありません。

だからこそ大切なのは、「常識の範囲内でやる」ということなのだと思います。

朝早くから必要以上に大きな音を出さない。

近隣の方に迷惑を掛けない。

ゴミをその辺に捨てない。

タバコを好きな場所で吸わない。

そして日曜日くらいは休む。

……。

よく考えれば、

全部、普通のことなんですよね。

なのに、現場のトイレに大きく貼り出されている。

ということは、

「普通のことを普通にやる」

というのが、実は一番難しいのかもしれません。

住宅を建てるのも大変ですが、その住宅が完成するまで、

近隣から一度も怒られず、職人さんにも怒らず、ゴミも残さず、日曜日も働かず、朝から大声も出さずに無事に完成させる。

これも立派な「現場の技術」なのかもしれません。

そして私は、今日もトイレの貼り紙を見ながら思うのです。

「家を建てるって……本当にいろいろ大変だなぁ」と。

……まあ、

トイレに貼り紙をされる大人がいること自体が、一番大変なのかもしれませんが(笑)

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