家は選べても、隣人は選べない。賃貸でも持家でもそれは変わらない。

早速ですが、家を買うとき、皆さんは何を選びますか?
- 駅から近いほうがいい。
- 学校が近いほうがいい。
- スーパーも近いほうがいい。
- 駐車場は3台ほしい。
- 日当たりも大事。
- 収納もたっぷりほしい。
当然です。
何千万円という大金を払って買うのですから、そりゃあ真剣になります。
ところが、家を選ぶときに、どうしても選べないものが一つあります。
それが……
「隣人」です。
- 家は選べる。
- 間取りも選べる。
- 色も選べる。
- 立地も選べる。
- 価格も選べる。
なのに……
隣の人だけは、内覧できません。
「すみません、こちらのお隣の方はどんな方ですか?」
「はい、とても良い方ですよ」
……と、不動産屋が言えたらどれだけ楽でしょう。
でも、そんなことは言えません。
なぜなら、ほとんど知らないからです。知っていたらもちろん言います。家族構成くらいはですね。
そして、これは持ち家でも賃貸でもまったく同じです。
家は選べても、隣人は選べない。
まさに人生最大の「隣人ガチャ」です。
内閣府の調査では
地域での付き合いを「している」と答えた人が52.7%、「していない」と答えた人が45.8%。
ほぼ半々です。
都市部や20〜30代では、「挨拶をする程度」という距離感を選ぶ人が多いようです。
これ、私は非常によく分かります。
会えば、「こんにちは」これでいい。それ以上でも、それ以下でもない。非常に平和です。
ところが、人間関係というものは不思議なもので、
「こんにちは」から始まって、気が付いたら人生相談をされている。
なんてこともあります。
「最近どうですか?」
「いやぁ、実はですね……」
……いや、そこまで聞いてません。でも、聞いてしまった。
そして次の日から、会うたびに続きを聞かされる。
こうなると、もう「こんにちは」が怖い。
深く付き合うと面倒?
しかし、本当に怖いのは、こういう人間関係だけではありません。
適度な距離を保てているうちは、平和なんです。
ところが、その距離を相手が勝手に踏み越えてきた瞬間、住まいというのは急に難しくなります。
例えば、「ちょっと庭の木が伸びてますね」くらいなら、まだいいんです。
ところが、「昨日、夜遅かったですね」となると、「えっ……見てたんですか?」となります。
さらに、「昨日のお客さん、何時くらいに帰られました?」
なんて言われたら、「あなたは何者ですか?」です。
家というのは、本来、安心して暮らすための場所。
なのに隣人との距離感を一歩間違えると、自宅なのに、なぜか監視カメラ付きの生活になります。
ご近所さんは半永久的
もちろん、ほとんどのご近所さんは普通の方です。
挨拶をすれば挨拶を返してくれる。
困ったときには助けてくれるし、町内のルールも守る。
そんな素晴らしい方もたくさんいます。
だからこそ、余計に難しい。
家を買う人は、住宅ローンを何十年も払います。
ところが隣人との付き合いには、「35年固定金利」も「繰り上げ返済」もありません。
しかも、途中解約できる保証もありません。
「ちょっと隣人が合わないので、来月から隣を変更してください」……とはいきません。
不動産屋に電話して、「すみません、家は気に入っているんですが、隣人だけ交換できますか?」
と言われても、私たちにも無理です。
できるのは、「……お気持ちは分かります」くらいです。
分かる範囲で確認
だから家探しというのは、本当は、
「駅まで何分」
「学校まで何分」
「スーパーまで何分」
だけではないのかもしれません。
できれば、
「隣の家から、どんな音が聞こえるか」
「夜はどんな雰囲気なのか」
「ゴミ出しのルールはどうなのか」
「近所付き合いはどのくらいあるのか」
そんなところまで見ておきたいです。
ただし、それでも完全には分かりません。
昼間は静かなのに、夜になると元気になるご家庭もある。
平日は静かなのに、週末だけ大騒ぎするご家庭もある。
逆に、昼も夜も静かで、「本当に人が住んでます?」という家もあります。
こればかりは住んでみないと分かりません。
周辺確認は大事
そして不動産屋として、どうしても言いたいことがあります。
「家は気に入ったけど、隣が気になる」
そういう場合は、ぜひ一度、時間帯を変えて周辺を見てみてください。
昼間だけではなく、夕方や夜、平日だけではなく、休日。
できる範囲で周辺の雰囲気を確認する。
近所の方に挨拶をしてみるのもいいでしょう。
ただし、いきなり、「お隣さんって、どんな人ですか?」と聞くのはやめたほうがいいと思います。
それをやった瞬間、あなた自身が新しいご近所情報の第一号になります。
「今日、家を見に来た人がね……」
翌日には町内に知れ渡っているかもしれません。
結局、家は選べます。
価格も選べます。
間取りも選べます。
立地も選べます。
でも、隣人は選べません。
だからこそ、家を購入するときには、建物だけではなく、「その家で、どんな暮らしをするのか」まで考えて選びたいものです。
そして、最後に一つ。
もし家を購入して、隣人がとても良い人だったら……
それはもう、「住宅購入、大当たり」です。
家も当たり。
立地も当たり。
そして隣人も当たり。
これはなかなかありません。
逆に、家も良い、価格も良い、立地も最高。
なのに隣人だけ……となったら、
「家選び、最後の最後でガチャ外した……」となります。
不動産屋としては、できれば全員に、
「建物★★★★★ 立地★★★★★ 隣人★★★★★」
の物件を買っていただきたい。
でも残念ながら、隣人の物件資料だけは、作れません。
こればかりは、
「住んでみてのお楽しみ」
……なのかもしれません。ま、ご注意ください。